第3章 2人の距離3
和さんはキスする時も薄っすら私を見ていて様子を伺っていた。
たまに目を開けて和さんを見ると優しく微笑んでくるから多分ずっと見ている。
それがさらに恥ずかしくてぎゅっと和さんの服を握るがキスが止む様子はない。
「…はっ。あっ」
思わず出てしまう吐息も飲み込む様にキスする和さん。
それでも優しいキスは私をとろとろに溶けさせる。
息が続かなくて身体がジーンと痺れてきた時にそっと唇が離れた。
はぁはぁと小さく息を整えていると和さんがそっと包み込んできた。
「あんまりその顔で見ないで?…止めんの大変」
フフっと笑いながら言う和さん
胸がキュウっとなるのがわかった。
それは苦しい感情じゃない。
ああ。私、この人の事本当に好きだなと改めて思った。
あれから私達は少し変わった気がする。
前より距離が近くなった。
ソファでも距離があったのが今はほとんど隙間がないくらい。
それでもそれ以上の進展はない。
あんなキスはあれ以来はなくて今は触れるだけのキスが何回かに増えたくらい
数週間経ったある日たまたま夜早くに仕事が終わり楓さんと食事をする事になった。
「うまくいってるみたいね。ニノちゃんと」
食事もそこそこにお酒を飲んでそう言う楓さん。
「え…和さんなんか言ってましたか?」
私の質問には答える気はないみたいで。ふ〜ん。和さんねー。とじとーっと見られた。
「まあ、でも!由梨が元気で良かったわ。雪乃くんがたまーに由梨の転けた瞬間とか臍チラの写真とか送ってくれるから元気な事はよく分かってるけどね。」
え、待って。
結構衝撃発言。
「なにしてんですか。」
はぁぁぁ。と今は居ない空さんに対して溜息を吐く
そして携帯を開き空さんにメールでばか。と一言打ち込み送信した。
その後は空さんも合流して散々失態を楓さんに晒され私はお酒のつまみにされた。
それでも楽しかったのは確かだけど。
帰り道、キャリーケースをコロコロ引いて人混みを掻き分けて駅に向かう途中。誰かに呼び止められた。
「あ、れ?…由梨ちゃん?」
そう言って私を呼び止めた人は見覚えのある人だった。