第2章 2人の距離2
もう流す涙も無くなるくらい泣いた。
楓さんはまた来るわと仕事に戻って行った。
明日。正式な処理をする事になった。
考える事は自分を責める事ばかりでどうしようもなかった。
そして少し安心してしまった自分がいて情けなく思った。
私はこの子をちゃんと愛せるのだろうか。
ずっと考えていた事。
ヒロトの子をちゃんと愛せたのだろうか。
それでも愛おしく思った事は事実で思いとは違う考えが過ぎる度頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
次の日。朝早くに楓さんが来て私の仕事を全て引き継ぐと言ってくれた。
「ありがとうございます。それが一番です。ずっとどうしようって考えてたので。」
楓さんだと安心です。と笑って言うと楓さんは苦虫を噛み潰したようなくしゃっとした顔をして私を抱きしめた。
「本当に。…結婚する?私、本気よ?」
耳元で囁かれたのでフフッと笑ってみせた。
「うーん。…いや、やっぱり遠慮しときます。」
そう言うと楓さんはそうね。と笑い返してくれた。
後期流産の場合、誘発分娩で赤ちゃんを出す。
つまり普通に陣痛がきて普通に産むのと変わらない。
でも普通と違うのは赤ちゃんが生きていないこと。
生きていても継続の見込みがないこと。
処置は滞りなく終えた。
しかし私の心の傷に深く刻まれたのは確か。
退院してからは暫く安静なのでほとんどをぼーっと過ごしていた。
たまに楓さんが来てちゃちゃっとご飯を作ってくれたり持ち寄ってくれたり。
楓さんのおかげで深く落ち込むことはなかったけどぽっかりと穴が開いてしまった様になっていた。
1ヶ月は貯金もあるしでほとんど引きこもり状態だった。
それでもテレビはしっかり見ていて、最近雪乃さんは人気が出て来たみたいで良く見かける。
そして嵐さんを見るとキュウっとまた胸が苦しくなる気がした。
私は多分まだニノさんが好きなんだと思う。
そんな引きこもり生活を抜け出すきっかけを作ってくれたのはやっぱり楓さんだった
「ちょっと!今から出てこない?」そう連絡がきたので言われた近所のカフェに向かうとどっかで見た顔がいた
「あ、お久しぶりです!」
そう言って立ち上がり一礼する人は雪乃さんのマネージャーに当たる人
「お!きたきた。」
こっちに来い来いと手招きするのは雪乃さん