白い小悪魔は誰のもの?~Another story~
第7章 ★溢れる思い(氷室)★
アメリカ時代です
主人公中学卒業後
〔氷室辰也〕
高級住宅が並ぶ町の一角、一際大きく綺麗な2階建ての家にたどり着いた
慣れた手つきで胸ポケットから鍵を取り出し、鍵穴に差し込むと、カチャンと心地よい音がして、扉を開けばどことなく花の香りが僅かに鼻孔を擽る
俺は迷いもなく真っ直ぐ2階へと階段を上がっていく。だが、勿論この家は俺の家じゃない
この家の持ち主は、恐らくまだベッドにくるまっているであろう、愛しい愛しい純白の女王様
その愛しい女王様からこの合鍵を貰ったときに、思わず感極まって抱き締めてしまったことはよく覚えている
この合鍵を持つのは俺だけだ。それは最近力をつけ始め、俺を焦らせている兄弟に対して唯一の優越感になっている
しっかりと鍵を胸ポケットにしまったのを確認すると、たどり着いた2階の部屋を開ける
よく整頓された部屋だな....机にいくつか書類が散らかっているのを除けば、だが
その光景を横目で見つつ、部屋の角に設置されている大きなベッドに近づいていく
そこには天使のような寝顔の小悪魔がスヤスヤと気持ち良さそうに寝息をたてていた
まるでお伽噺のワンシーンのようだ....
余りにもその姿が美しく、ずっと見ていたい気持ちになる
だがいつまでも見惚れている訳にはいかない
気を取り直して、そっと彼女の肩を揺する
氷室『レイラ...』
返事はない。よほど深く眠っているのだろう
なら仕方ない、とベッドの上へと上がる
ギシッ.....とベッドの軋む音がやたら大きく聞こえる
まるで彼女を押し倒したような体制になり、心臓がバクバクと煩く高鳴っていく
あぁ...綺麗だ....
うっとりと眺めてしまう
真っ白な髪を一房手に取れば、指の間をスルッと流れてすり抜けていく
今度はきめ細かい肌に手を滑らせ、高鳴る鼓動もそのままに、柔らかな唇に口づける
眠りについた姫君を起こすのは王子のキスだと相場が決まっているだろ?
『ん....』
起きたか?
軽く唸ると、ゆっくりと瞳が開けられていく。その瞬間でさえもまるでお伽噺のワンシーンだ
透き通るような二つのオレンジの瞳が俺を映していく