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さくらいろのおと。

第2章 思いは揺れて、重なって。




慌てて飛び起き、仕事着である制服に袖を通す。

実際、朝礼までには余裕なのだけれど、つい一昨日引越したばかりのこの周辺の地理と交通状況が良くわかってないから早めに出ようって思っていたのはつい昨日のこと。

そして今日はゴミの日なのである。

ゴミの日は早めに出してね、と大家さんに言われていたから「朝イチでだしたら余裕じゃん」とか思ったけど、これ、次回に回した方が…

いや、流石に嫌だ。
あと1週間も待てない。

そう思えば体はゴミ出しの準備に取り掛かっていた。

『ご飯…はいいや…』

まとめながらふとお腹がすいたなぁ、とか思ったけど食べてる余裕なんてない。
仕事用の鞄となんだかんだで沢山あって大きな袋二つ分になってしまったゴミを持ち、返事がないのは知っているけど、玄関を出て実家と同じように出る前の挨拶。

『…いってきます!』


「はい、いってらっしゃい」


『え?』


返ってくるはずのない言葉に何事かとそちらを向けば、向かいの部屋から丁度出る所であったと思われる長身の好青年が面白そうに笑っていた。

「あ、ごめんなさい。いってきますって聞こえたのでつい…」

頬をかきながら困った様に眉を下げて笑った彼はお詫びにと言いつつ私の手から二つのゴミ袋を取る。

『そんな、申し訳ないです!』

手を伸ばすが、それは阻止をされてしまった。

「急いでたみたいですし、引き留めちゃったお詫びも込めて、ね」

そう言われてしまえば、断るに断れないじゃないか。

『じゃあ、お言葉に甘えてお願いします』

「はい!任されました!」

笑った顔は向日葵みたいに明るくて眩しくて。

「じゃあ、改めていってらっしゃい」

『いってきます』

彼の笑顔につられて笑顔になって、嬉しい気分のまま早足で駅への道を進んだ。


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