第2章 第一話:魔法使いは、樽の中
「なら、助けたかもしれません。うっかり名前も言ったかも」
「あら、そういう子が真広君の好み?」
「いえ、あいつは年上好きです。それでも見捨てる時は容赦なく見捨てますが……。ただ、真広には妹がいましたから、似た子を見ると放っておけなかったかもしれません。あいつは愛花ちゃんを何より大事にしてましたから」
「大事にしてた?どうして過去形?」
「彼女は今、この下です」
そう言って吉野は不破家の墓を指差した
「本当に何も知らない?」
地域封鎖とかニュースで言ってないよな
そんな秘密を知った相手をそのまま生かしておく?
えーと………どうする?
とりあえず時間を稼ぐ?
少し気を逸らせれば……
「蝶……、揚羽蝶が飛んでます」
「蝶々がどうかしたの?始めて見るわけでもないでしょ?」
「揚羽蝶はサナギで冬を越すはずです。今、十一月ですよ!雪降ってるんですよ?普通に飛んでるわけありません!」
「でも一匹だけでしょう、何かの間違いで………⁉」
ヒラヒラヒラ……………
「そんな………‼まさかこれ………」