第3章 第二話:彼女はとても綺麗だった、と少年は言った
《なら魔具を………ステンレス鋼のナイフがあったろう。殺人犯のトレースはやや特殊な魔法だ。刃物が向いている》
「それは?」
「魔法の力を封じた魔具だ。葉風は何らかの理由で魔法が使えなくなった時のためにあらかじめあちこちに隠しておいたんだ。一族の者にも気づかれないように。そいつをこう……、直接肌に触れる形で身につけ葉風の音声で許可が出されていればオレでも単純な魔法が使える。さっきみたいにな。ただし、使える回数は限られてる」
金属が崩れた………
「これで黒鉄病も防げる。お前が大丈夫だったのもオレが近くにいたからだ」
「本物の魔法使い相手にこんな小道具で対抗出来るのか?」
《出来なければ誰も左門を止められん。魔法を破れるのは魔法だけだ》
「葉風、魔法の許可を出せ」
《よし、魔具を放すな………………。我が言葉にて聞き届けよ、樹の中の樹、大樹の中の大樹、始まりにありし、はじまりの樹よ。この地より人の理を外れし者、血を欲せし者の跡をたどれ。聞き届けよ》
ズキッ
なんだ、これ……
ナイフを刺したところからツルが出て………