第3章 第二話:彼女はとても綺麗だった、と少年は言った
《1年くらい前の事件となれば残留した犯人の情報を収集するのに時間がかかるぞ》
「どのくらいだ?」
《5分》
「大した時間じゃない。オレはもう1年待ってる。愛花を殺したやつを、この手で殺すのをな」
…………。
真広は葉風さんと取引した
手を貸す代わりに_________
1年前、妹を殺した犯人を魔法で見つけろ、と。
真広にとって世界がどうなろうと構わない
愛花ちゃんを殺したやつを見つけられるなら迷わず世界を滅ぼすだろう
「お前の心意気には天国の愛花ちゃんも感激するだろうね」
「バカ言うな。死んだ人間は喜びも悲しみもしない。天国なんてものもありはしない。オレは愛花を殺したやつが何の裁きも受けない不合理を許せないだけだ」
これは誰のためでもない
真広はただ自分のため
そうしないではいられないだけだ
「だからオレには魔法が必要だ。だから葉風に手を貸し、ついでに世界を救ってやる」
「葉風さん、こんなヤツを信用していいんですか?」
《利害は一致している。なら裏切らん。そいつが妹思いのバカで、むしろ好都合だ》
この人も性格に問題がありそうだな…
「吉野、町はじき封鎖される。早く逃げろ。お前の両親は町の外で働いてるから無事のはずだ。お前ひとり金属化していないのは適当にごまかせ」