第2章 第一話:魔法使いは、樽の中
「心配するな。そのバカを止められるやつが一人だけいる。その一族の姫にして史上最強の魔法使い鎖部葉風。こいつがいれば止められる」
「じゃあ…そのお姫様は今どこにいるんだ?」
「身内にはめられ、どことも知れない無人島に閉じ込められているよ」
「どことも知れないって……。魔法を使って脱出できないのか?」
「魔法を使うには条件があって、そこじゃろくに使えない」
「ダメじゃないか」
「ダメだな。だからオレがその姫様に手を貸してやることにしたのさ」
《おい真広、これは公平な取引だ。恩を着せられる筋合いはない》
え!
木の人形が、喋った⁉
「そうは言っても葉風、オレがいなくて困るのはお前だろ?」
《……ほう、貴様の妹を殺した犯人を私が見つけてやらなくてもいいと言うのか?》
「おい……その人形はっ⁉」
《うん?誰かいるのか?》
「あぁ、いるが……」
ズズンッ
「また何だ⁉地震?」
ゴゴコゴコ………
「蝶が……海に……?集まってる?集まってるよな?」