第2章 第一話:魔法使いは、樽の中
「いつものが来る。今度は海だ」
《わかった。方角を正確に測れ。これで左門の本拠地がかなりしぼれる》
「真広……、その人形で無人島の魔法使いと話ができるみたいだけど……。そんなものどうやって手に入れた?魔法でお前の手に?でもろくにつかえないんだよな?」
「一ヶ月前、オレは砂浜を流れついてたガラス瓶を見つけた。中にはこの人形とメッセージが書かれた板きれが詰められていたよ。板にはこうあった"魔法を信じ魂と引き換えでも叶えたい願いがあるなら……この人形に釘をうて"と」
瓶詰めの手記!
海に流されたそれを偶然真広が拾ったのか!
「お前はその人形に釘を打った。それで何らかの魔法がやっと発動し遠くに離れた孤島の魔法使いと話せるようになったんだよな?」
「あぁ、本当に話せるだけの頼りない魔法だがな。そしてオレは取引した。オレはそちらに手を貸してやる。その代わり愛花を殺した犯人を魔法とやらで見つけろとな。愛花が殺されたのは不合理だ。魔法も不合理だ。なら二つをぶつければ辻褄が合う。愛花を殺したやつを、この手で殺してやれる」
ドォォォォ
「見ろ吉野、あれがオレらが止めようとしてるもの、その力の一部だ」