第14章 ドクドクだネ?(シトロン)
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なんとなく。
本当にただなんとなく、去ろうとしたシトロンくんの腕を掴んでしまった。
シトロンくんはというと、初めは驚いていたけど、すぐに目を細めて私の隣に座った。
「もー、困ったお姫様だヨ」
そう言って私の髪を撫でた。
久しぶりに髪を撫でられてなんだか心地いい。
「……撫でられるの気持ちいい」
「いつもの強いカントクも素敵だけど、今日みたいにか弱くてキュートなカントクはもっと素敵ヨ」
「…………それ、褒めてる?」
「褒めてるネ!」
なら、そういう事にしよう。
お腹もいっぱいになって、優しく髪を撫でられて、とても眠い。
うとうとして、頭がカクン、と落ちた。
「カントク、寝ていいヨ」
「ん……」
「でも、やっぱりオトコの前でそんなキュートな顔しちゃダメネ」
「………?」
そういうと、シトロンくんは私にキスを一つ落とし
おやすみ、カントク。そういって部屋を出ていった。
私はというも、キスに突っ込める余裕はなく
かといって嫌ではない自分を不思議に思いながらそっと目を閉じた。
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