第13章 ことのは(高遠丞)
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私が難しく考えるよりも、もっと単純で良かったんだ。
「丞さん、言ってくれなきゃ分からないです」
「…ああ」
「好きです」
「…俺も………好き、です」
「名前、呼んでください」
「………いづみ」
丞さんの顔が真っ赤だ。
本当の丞さんは恥ずかしがり屋だったんだ。
微笑んでいたら、緊張が解けたのか、私のお腹が大きな音で鳴り出した。
「…メシ、買うか」
「はい!」
「今日の朝メシ、皆木が作ってくれてたな。美味かったぞ」
「そうなんですね、楽しみー!」
丞さんより先に歩いて朝ごはんを目指す。
その途中で丞さんが私の名前を呼んだので、止まって振り返った。
「…今夜、部屋、行くから」
改まって言われると照れる。
けど、言葉を発した本人の方が照れていて。
「ふふ、連絡して下さい……絵文字と顔文字付けて」
「………努力する」
言葉って、大切。
当たり前の事を噛み締めて、朝ごはんのいい香りがするキッチンに2人で手を繋いで向かった。
next…?