第13章 ことのは(高遠丞)
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「監督…と、紬か?」
「丞、おかえり。どこいってたの?」
「いや、ちょっとな…監督と話がしたいから外してもらえないか?」
「分かった。じゃあまた後で、監督も」
紬さんがさっき座っていた席に丞さんが座る。
さっきまで明るかった雰囲気も、沈黙によって気まずくなり、思わず下を向いてしまった。
「……紬と何の話してたんだ」
「え?いや、大した事ないですよ」
「だったら談話室でも良いだろう、別に紬と2人きりにならなくたって」
プイ、と丞さんがそっぽ向く。
これはもしや、ヤキモチという物では?
「だいたい今日の朝も具合が悪いのかと思って部屋に行って見て、元気が無さそうだったから、さっき薬局でゼリー買ってきたのに、紬とは楽しそうに話してて…」
「…丞さん?」
「前もそうだ。伏見と一緒にキッチンに立って楽しそうに料理作って、それか「丞さん!」
思わず会話に割って入ってしまった。
丞さんは目をまん丸にして私を見る。
その様子と、さっきの話が愛おしすぎて笑いが込み上げてきた。
「っ、ははは!丞さん、かわいい!」
「なッ!俺はただ!」
「…ヤキモチですか?」
「……………」
最後、小さい声で "ああ" って言うのが聞こえた。
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