第12章 いただけないか(有栖川誉)
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「いらっしゃいませ…あ、有栖川さん。お久しぶりです」
「やあ、今日は2人だ」
「有栖川さんにこんな可愛い彼女さんがいたなんて…って、いづみ?」
「え?」
「……いづみくん、霧坂くんと知り合いだったのか?」
霧坂…って、パッと思い浮かばない。
うーーーんと唸ってるとあちらから言葉が降ってくる。
「大学で一緒の学科だったろ!ほら、覚えてない?」
言われてみれば、と言った印象。
多分特別話したこともない人だったのかな。
「有栖川さん羨ましいです、いづみ、大学の時凄い可愛くてみんな狙ってたんですよ!」
「ほう、そうだったのか。霧坂くん、悪いが席に案内してくれないか」
「あ、そうでしたね!こちらです」
あからさまに苛立ってる誉さんを気にもせず、霧坂という人は私達を席まで案内する。
「ご注文お決まりですか?」
「いつもの、アールグレイを頂こう。いづみくんは?」
「あ、えーっと…じゃあ私も同じ物ください」
「かしこまりました!お待ちください」
メニューを書き、颯爽といなくなる。
気まずい沈黙…気を遣っているのか、口角は上がってるけど目が笑ってない…
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