第12章 いただけないか(有栖川誉)
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流石は紳士、というかなんというか……
あの寮にいて、みんな私に気を遣ってくれるけど、やっぱり誉さんが1番女の子扱いしてくれるというか…
女の子っていう歳じゃないけど。
車道側を歩いてくれるとか、歩きづらいだろうけど私の歩幅に合わせてくれるとか、そんな細かな配慮がなんだかくすぐったい。
他愛もない話と誉さんの即興詩を聞きながら、そんなこんなで目的の喫茶店に着いたみたいで
誉さんの周りにお花が飛んでるのが見える気がする。
「ココだよ、いづみくん」
「す、っごい…」
「ハッハッハ!その反応は予想外だったな」
本当、外装がお洒落すぎた。
ビロードウェイの裏道にこんなところがあったなんて…
「さあ、どうぞ。お嬢様」
誉さんはドアを開けてくれて暖かな声で私を導く。
鷺島みたい……
主演の誉さん、かっこよかったな。
なんて、第二冬組公演を思い出していたら喫茶店の店員さんに声を掛けられた。
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