第12章 いただけないか(有栖川誉)
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2人で寮を出る前に、入り口で密さんが寝ていた。
もちろんデートにいくからマシュマロなんて持っていない誉さんは、寝ている密さんを激しく揺さぶり叫ぶ。
「密くん、起きたまえ!ここではさすがに踏まれてしまうぞ!」
「………マシュマロ」
「今日はあいにく持ってない。危ないから中に入って寝たまえ」
「密さん、誉さんの言う通りですよ。危な「カントク…今日いい匂い、好きな匂い」
そういってしゃがんだ私に密さんが抱きついてきた。
誉さんはハッとした顔で私から密さんを引き離す。
「密くん、監督くんにくっつくのはやめたまえ」
「………ケチ」
「何ッ!?」
「まーまー…誉さん。密さん、ちゃんと寮で寝て下さいね」
「うん……すぴーーー……」
また寝てしまった密さんには悪いけど、どうにも出来ないのでそのままにして出てきてしまった。
多分、支配人が中に運んでくれるはず…
少しもやもやしながら、喫茶店に向かう。
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