第12章 いただけないか(有栖川誉)
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コンコンコン、とノック音。
誉さんだろうと思って開けたらやっぱり誉さんで、それが嬉しくてくすぐったい気持ちになる。
その顔がよっぽど変だったのか、誉さんが笑った。
「おやおや、変な顔だねぇ。ワタシが来たのがそんなに嬉しかったのかい?」
「ふふ、そうです」
「そんなに素直だと、ここで押し倒したくなるじゃないか。ワタシがあげたルージュもしてくれいる様だし」
「だッ、だめです!!お茶行くんでしょ!?」
「冗談だよ。キミに、とてもよく似合う」
ひとつひとつが色っぽくて、聞いているコッチが照れてしまう。
誉さんの格好を見ると、いつものラフな感じよりはカッチリした感じだ。
お茶に行くだけ、と言ってもデートだって思ってるのか少しでも気にしてくれてるみたい。
「……いづみくん」
「はい…っん?」
腕を引っ張られていきなりキスされた。
ブライトピンクが誉さんの唇に移る。
「すまない、愛おし過ぎて急にキスしたくなってしまった」
「びっくりしましたよ!あ〜〜誉さんの唇に付いちゃいましたね…」
「このくらい構わないよ。ワタシが望んでした事だ」
そう言って指で口を拭って、色づいた指を愛おしそうに見る。
今日の誉さん…何かが変だ。
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