第11章 漫画みたいな恋(向坂椋)
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幸い、傘があったから顔まで水が跳ねて来る事はなかったけど、私を庇った椋くんは泥水で服が汚れてしまった。
「椋くん!ごめんね!?汚れちゃったし…体冷えちゃうよね!?」
「ふふ、カントクさんが濡れなくてよかったです」
穏やかな口調に似合わず、優しい男の人の顔。
今気づいたけど、庇ってもらう時、ぎゅっと抱きしめてもらったのを思い出した。
「……カントクさん、顔、真っ赤ですよ?どうかしましたか?」
「いっ、いや、さっき庇ってもらった時…なんか、抱き締められたなー…って」
「もしかして…照れてくれてるんですか?」
いつもの椋くんとは違う、意地悪めいた顔。
相手に対しての意識が変わっただけでココまでドキドキするんだ。
「ボクだって、ちゃんと男の子なんですよ?」
「はっ…はい…」
「カントクさん、耳まで真っ赤で可愛いです」
大きな手で頭を撫でられる。
ドキドキして心臓が持たない。
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