第11章 漫画みたいな恋(向坂椋)
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「カントクさんに意識してもらってるなら、ボクにもチャンスがありますね」
「え?」
「…お兄さんばっかりの中で、埋もれてるボクですけど、カントクさんの王子様になれるかもしれないですよね」
心臓の音が聞こえるんじゃないかなってくらい、ドキドキしてるし、ドクドクと血液を全身に送ってる感覚が分かる。
中学生って思って、何も思ってなかったけど、ダメかも。
「ボク、カントクさんの事、女の人として好きです。だから、ボクが立派な男の子になるまで待っててもらってもいいですか?」
「………はい」
椋くんに勧められた漫画でこんな甘ったるい展開があった気がする。
大人になって、こんな綺麗な恋なんて出来ないと思っていたけど。
「えへへ…少女漫画の男の子みたいに、カッコつきましたかね?」
充分だよ、むしろお腹いっぱいだよ。
気づいたら小降りになっていた雨の中を、二人仲良く素早く帰る。
帰ったら、椋くんの服を洗ってあげないと汚れが取れないな。
臣くんから教わった、ホットミルクを出してあげよう。
傘の中、手を繋いで寮に向かった。
end