第11章 漫画みたいな恋(向坂椋)
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「あれ?カントクさん?」
ふわっとした、聞き慣れた声。
声がした先を振り向くと見慣れた可愛い男の子。
「む、椋くん」
傘が無くて濡れて帰ろうと思っていた事を伝えた。
すると顔色を変えながら、少し待っててください。と走って行ってしまった。
数分後、戻って来た椋くんの手にはビニール傘。
「え、椋くん…もしかして買ったの?」
「えへへ…じゃなきゃカントクさん、濡れちゃって風邪ひいちゃうじゃないですか」
なんて出来る子なの椋くん。
ふと、椋くんが買って来た傘が1本なのに気がついた。
「椋くん、傘1本だけ買って来たの?」
「あ、はい。カントクさんと一緒に入ろうと思って…あああ!こんな僕みたいなミジンコ、美人なカントクさんと一緒に傘に入るなんておこがましいというか!」
「大丈夫だよ椋くん。私で良ければ一緒に入ってください」
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