第10章 モテの定義(七尾太一)
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隣に腰掛け、太一くんを覗き込む。
何か言いたげな、そんな顔だったから。
「あっ…監督先生、さっきは…ごめんなさいッス…」
「んーん。気にしてないよ。それより、太一くんに何があったか知りたいなーって」
「えーーーーっと…学校で…ちょっと…」
「…嫌なら無理して言わなくて良いよ。ただ、太一くんに辛い事があったのかなって思ったから」
私がそう言うと、太一くんは少し複雑な顔をして笑った。
一つ、ため息をついて太一くんが口を開いた。
「いやー!監督先生には敵わないッスね!」
いつもの、満面の笑み。
夕日と相まってか、とくん、と心臓がなった気がした。
太一くんはもう一つ、今度はため息では無く、息を吐いて口を開いた。
「監督先生、俺っち、好きな人がいるんス。小さい時の片思いの子じゃなくて。
その人、すんげーかわいいんス。
でも、その人は俺っちよりも大人で、恋愛対象として見られてないんスよ。
それをクラスの子に話したら、まあ、けちょんけちょんに言われた訳なんスけど…」
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