第9章 君と乾杯。(有栖川誉)
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「はーい…って、誉さん?」
「カントクくん、お邪魔するよ」
ワインを片手に誉さんが入って来た。
自分の部屋のように、ドカっと床に座る。
さっきまでのお酒が回っているのか、頬が赤い。
「…ん?本当にお邪魔だったかな?」
「いえいえ!びっくりはしましたけど…」
「そうか、ならよかった」
ホッとしたように誉さんが話す。
誉さんの顔ってちゃんと見た事無かったけど、綺麗な顔してるなー…
ぼーっと誉さんの顔に見惚れていたら、突然顔を赤らめた。
「なっ…!なんだねさっきから!流石に恥ずかしいではないか!」
「すみません、でも綺麗な顔だなーって思って見惚れちゃいましたよ!」
「…カントクくんの方が、美しいとは思うがね」
「えっ」
それ以上は語らないまま、誉さんはワインをグラスに注いで口をつける。
少し、もやっとする。
「…あー!誉さん、私にもワインくださいよー!」
なんて言って、誉さんの持っていたグラスを横から奪い取り、飲み干す。
ワインなんて久しぶりだな。
誉さんはその光景を見て目が真ん丸。
流石にやり過ぎたかな…?
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