第2章 好きだから-捕食-
いつもいるはずの二人がいないと淋しいとか、そういうのはまだ分かる。
僕はいなくたってぜんぜんOKだけど、佐奈はそうじゃないのは理解できる。
けど……。
面白い…ってどういう意味?
ありえない、ってこと?
でも…さ……。
決心は、鈍らない。
それどころか、更に強くしたまま、僕は食事の片づけを手伝って、一緒にテレビを見て、いつも通りに他愛のない会話をして、いつも通りにちょっと甘えてみたりもして。
そして…更けていく夜。
先にどうぞ、って佐奈に勧められてシャワーを浴び終えた僕は、その後、佐奈が入っていったバスルームから聞こえてくるシャワーの音に耳を澄ましながら、すっかり乾いた髪をぐしゃ、と握り締めた。
テレビの音は、もう邪魔だ。
リモコンでオフにして、僕はソファから立ち上がった。
手元のバスタオルを放り出しかけて…でも、そうだ、と思い直して握り締める。
「佐奈の体、濡れてるだろうしね」
今シャワーを浴びてる佐奈の肌は、当たり前だけど、濡れてるはずだから…バスタオルは必要だ。
手にあるのは佐奈のじゃなくて僕のだけど、関係ないし、むしろ、それも良い。
近づくほどに、シャワーの音がはっきり耳を突く。
そう距離のないバスルームに近づくのに、何歩もかからない。
シャワー音に紛れて、体中が鼓動になったみたいに騒ぐ。
どきどきしてるのか。
緊張してるのか……。
きっと、そのどっちもだ。
それから…佐奈を驚かせてしまう罪悪感も、ある。
でも、それ以上なのは……。
かたんっ。
片手にバスタオルを握り締めたまま、僕は躊躇いなくバスルームのドアを開けた。
「………ぇ?」
驚くより、怒るより、佐奈がその場で固まったのが分かった。
そうだよね、そりゃ、そうなるよね。
でも、それも一瞬。
裸を見られたことが恥ずかしいんだろう。
蹲りながら僕を叱る。
しきりに出てって、と叫ぶ声が耳に響いた。
でも、ここで引けるわけないだろう?
ずっと…ずっとこの時を待ってたんだからさ。