第7章 愛してるから-届いたこの手を離さぬように-
だから…二人が帰ってきた日の夜(って、その前に、成体化した僕に二人ともかなり引いてたけど、二人の反応なんて別にどうだって良い)。
そろそろ日付も変わって、もう寝ようかっていう、そんな頃……。
それまでは極力普通に、佐奈に触れたり、恋人っぽい行動とかもしないように我慢してた僕は(だって佐奈が、せめて二人が帰ってきた日くらいは…って言うから)。
「佐奈…おいで?」
『寝よう』とか、そういう言い方じゃなくて、僕はわざとその言い方をした。
だって『早く寝ようよ』とかだと、成体前の僕がふざけて(って、あれはあれで本気も入ってたんだけど)、何度も言ってた台詞と同じだったりするから。
前と変わってないって思われるのも癪だし、佐奈が僕のだって分からせるには、この言い方が良いと思ったんだよね。
だって、『しよう?』って言っても良かったけど、それだと佐奈が恥ずかしがって怒りそうだしさ。
まあ、でも、今の台詞で煉と厳が狙い通り固まったのはともかく、何だか佐奈まで固まりかけてたから。
僕は溜息を吐いた。
『二人が帰ってきた日くらいは』っていう佐奈との約束、僕はちゃんと守ったよ?
二人が戻ってきたのはもう…昨日になった。
さっき日付、変わったよね。
だから……。
「何固まってんの?ほら早く、いつもみたいにおいでよ」
『いつもみたいに』
二人がいない間もそうだったんだぞ、ってはっきり匂わせる、トドメの一撃。
僕は佐奈の手を引いて(もちろん僕の)部屋に入りながら、緩む口元を止められなかった。
ぱたん……っ。
ドアが閉じる音を聞きながら、僕は佐奈を抱き上げる。
誰がいようと関係ない。
僕と佐奈の甘い時間が今夜も、始まる……。
これからも…ずっと……。
END