第2章 好きだから-捕食-
邪魔者がいない、爽やかな午後。
今日から二週間休暇の佐奈も家にいて、こんなに良い日はない。
リビングのテーブルで格好だけ追試の勉強をすれば(だって本当はこんな問題簡単だし)、佐奈が一緒にいてくれる。
いつもなら何かと佐奈に話しかけたり、邪魔してくる二人もいない。
今日から佐奈は、僕だけの佐奈だ。
嬉しくて嬉しくて、楽しい時間はあっという間に過ぎる。
佐奈の手作りの夕食も、今夜は僕だけのものだ(もちろん、僕もちゃんと手伝ったけど)。
向かい合って囲む食卓。
二人きりのそれに、僕の頬はどうしたって緩んでしまう。
それなのに。
「こうして二人だけだと、何かちょっと淋しい感じだね」
いつもはもっと賑やかなのに…なんて、佐奈がここにいない二人を懐かしむようなことを言う。
箸を握る手に、無意識に力が篭もった。
佐奈にとっては確かにそうかもしれない。
僕も煉も厳も、みんな同じ生徒なんだろうけど…でも…それも……。
今夜から…変わる……。
まだ露わにしない、心に決めたことを綺麗に隠して、僕はわざと笑った。
「そうだね、でもたまにはこういうのも良いんじゃない?ほら、それにこうしてると、何だか新婚さんみたいだねー」
言葉では茶化して。
でも…本当にそうなれば良いと思いながら、僕はにこにこと佐奈に笑いかける。
途端、佐奈はきょとん、として、それから、笑い返してきた。
「あはは、瑠衣ってば、何を言うかと思ったら」
笑顔で返された言葉がそれだけだったら、まだ良かったけど。
「面白いこと言うね、瑠衣」
続く笑顔でそう返されて、僕は一瞬、同じように笑うことができなかった…けど。
「あ、はは、そ、そうかな……」
強引に笑ってみた。
きっと、我ながら不自然だったと思う。
佐奈もちょっと不思議そうな顔をしたけど、気づかない振りで通すしかなかった。