第1章 好きだから-罠-
ついでに言うなら、テストでコケたのも、もちろんわざとだ。
テスト結果が悪かった擬人化は今回の合宿は不参加とする…って情報を、実はこっそり聞いてたから。
用もないのに研究所に通ってるとか、他の先生にまで愛想を売る奴…なんて、まるで僕が周りに媚びてるみたいに、いつか厳が言ってたけど。
「馬鹿な奴」
誰が媚びたりするもんか。
僕が笑いかけて、傍にいたいのは佐奈ちゃんだけだ。
でも情報取得の為には、こういうのってすごく有効だって、知らないの?
お陰で今回のことだって、二人の知らない情報を早くから手に入れてた僕は、わざとテストで悲惨な点を取った。
何も知らずに、自分が悪いのかもって落ち込む佐奈ちゃんには、ちょっと良心が痛むけど。
「ごめんね?佐奈ちゃん。代わりに追試では絶対、良い点取るから」
だってあんなテスト、本当はどうってことなかった。
でも必要だったから、わざと間違えたんだ。
「ごめんね……」
誰がどうなろうが、どう思おうが、本当にどうでも良い。
でも、佐奈ちゃんが落ち込んだりするのだけは、胸が痛くて堪らない。
これから…もしかしたらもっと、佐奈ちゃんにいけないことをしようとしている自分なのに……。
でも…だけど。
こんなチャンス、滅多にない。
邪魔な二人が揃って留守。
しかも一日だけじゃなくて…二週間も、なんて。
だから、これを逃すなんてありえない。
十四日が過ぎた後…二人が戻ってきた時には……。
「佐奈は…僕のものだ」