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擬人カレシ~白兎・三人目の生徒編◆裏◆~

第1章 好きだから-罠-


「佐奈ちゃん、大好きだよ」
「はいはい」
「はいはい、じゃないよ。真面目に聞いてよ」
「聞いてるよ?」
「ほんと?」
「うん」
「じゃあ、ちゅーして?」

言った途端、平手が飛ぶ。
もちろん、佐奈ちゃんじゃなく、これは厳のだ。
でも、ひらり、とかわして、こっそり舌を出しながら、僕は佐奈ちゃんにしがみついた。

「怖いよ、佐奈ちゃん。ねえ、だから今日は一緒に寝よ?」

まあ、こればっかりは、まだ一度も叶ったことはないけど。

「それはだーめ。ほら、早く寝なさい」

案の定、今夜も優しくではあるけど、彼女は応じてくれない。
そんなの分かってる。
分かってて、それでもわざとやってるんだ。
ねえ、この意味分かる?
駄目って言われるって分かってても、いろいろ言ったり甘えたり、抱きついたりしてる。
これの意味なんて、きっと二人には分かんないよね?
くすくすくす。
声を立てずにいた笑い声が、気づいたらしっかり口を突いてた。

「ふふ……」

でも、良いや。
大丈夫。
擬人化OKなこのマンションは、全室完全防音の最新設備だ。
先生についてマンションに移住した擬人化の中には、なかなか動物の頃の癖が抜けなくて、種によって違うけど、遠吠えしたり、無駄吠えしたり、色々いるらしい。
で、そうすると当然ご近所迷惑ってやつになるから、近頃では、擬人化の暮らすマンションは全戸完全防音…なんだって。

もちろん、ここもそう。
玄関を入ったそこから、居住スペース全部が完全防音対策されてる。
リビングはもちろん、廊下、キッチン、バス…全部。
家の外に音が漏れたりすることはない。
もちろん、それぞれの個室…そう、僕がこうしているこの部屋も。
何かの拍子に擬人化が獣化して騒いじゃっても、これならノープロブレム。
隣はもちろん、階の上や下への音も完全シャットアウトっていう優れものらしい。
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