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擬人カレシ~白兎・三人目の生徒編◆裏◆~

第5章 好きだから-転化~もう遅いかもしれないけど-


「ねえ…佐奈。前の僕が言ってた『大好き』とは違うんだよ」
「……るい…」

僕を見上げながら、佐奈がぽろ、と涙を零す。
僕はそれだけで慌ててしまった。
もっといっぱい泣かせたくせにって言われそうだけど、でも…何か凄くぐるぐるして。

「佐奈? ごめん、僕…嫌なこと、言った?」
「ううん。違う…違うの……」

本当はちゃんと知ってた。
気が付いてたけど、答えられないと思ったから。
そう独り言みたいに呟いて、佐奈は僕を見た。

「知らない振り…してたの…。ごめ、ん…なさ…っ」
「何で…そこで佐奈が謝るの? 僕が悪いんだよ?」

そうだよ。
こんなことしちゃう前に、本当に本気で好きなんだ、って言えば良かったんだ。
たとえ本気にしてもらえなくても、最初は相手にしてくれなくても……。
まだ成体前の僕なんて、佐奈に軽くあしらわれちゃうかもしれない。
そう考えたら、なかなか本気で言葉にできなかったのは本当だけど。

だけど何だか…物凄く自分が馬鹿に見えてきた。
こうやって考えてみたら、もっと違うやり方があって、無理矢理こんなことしない方法だってあったかもしれないんだ。
そう思ったら、今日までの自分が、無性に馬鹿でどうしようもなく思えて。

「ごめん…嫌なことして、怖がらせて…ごめんなさい。謝って済むなんて思わない。でも…ごめんっ」

佐奈の真上で、僕はぎゅって目を瞑る。
このまま殴られても良い、そんな気持ちだった。
それなのに…優しく、頬に触れたのは……。

「佐奈……?」

恐る恐る目を開けたら、真っ赤な顔をした佐奈が手を伸ばして、僕の頬を触ってた。

「佐奈……」

名前を呼んだきり、その後どうしたら良いか分からなくて、僕は固まった。
そうしたら、目の前の佐奈が、真っ赤なのはそのままで、でも少しだけ目を吊り上げた。

「あ、あんなこと…しちゃダメなんだからね!」
「うん…」
「犯罪なんだから!」
「ごめんなさい……」

佐奈に叱られるまま、僕は項垂れるばっかりだ。
昨夜まで佐奈を襲いまくってた僕なんて、もう何処にもいなかった。
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