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擬人カレシ~白兎・三人目の生徒編◆裏◆~

第5章 好きだから-転化~もう遅いかもしれないけど-


そうしたら…佐奈の言葉が、ぽろぽろと零れ始めた。

「それに…るいは、まだ成体じゃないから…私がちゃんと…しっかり、しなくちゃ、って。そう、おも…って、た、のに…っ」

だけど言葉の最後、佐奈の声は涙声になってきて、僕は驚いて佐奈の顔を見ようとしたんだけど、

「それなのに…私……っ」

泣きながら僕の腕を掴む佐奈に驚いて、僕は動けなくなった。

「佐奈…佐奈?全部、僕が悪いんだ。僕が……」

全部、僕のせい。
分かっててやったことなんだ。
佐奈を泣かせるって知っててやった。
なのに、こんな風に佐奈が泣くのは辛い。
矛盾してる。
分かってるけど、それでもやっぱり佐奈の涙は痛い。
だから僕を、責めて良い。
佐奈が辛そうにすることなんてない。
僕が全部、悪いんだ。
それでも佐奈を離せない、僕が……。
それなのに佐奈が首を振るから、僕は、すごく驚いた。

「佐奈?」
「瑠衣が私に懐いてくれて、すごく嬉しくて、毎日とても楽しかった」
「…………」

僕は無言で頷いた。
それは知ってる。
分かってるよ。
最初は先生なんてどうでも良いって…人間になる為に必要なだけだから、邪魔でさえなきゃ誰でも良いくらいに思ってた僕が、佐奈に会って、段々、傍にいるのが楽しくなって、誰と一緒にいても感じなかった気持ちを知ったんだ。

始めはただ『大好き』なだけだった。
大好きなお姉さんに懐く子供みたいな、そんな感じ。
その気持ちのまま、僕が佐奈に甘えたり、『好きだよ』って言う度に、佐奈は嬉しそうにしてくれた。
でも…その『大好き』が、僕の中で違う『好き』になるのは、すぐだった。

だけど、毎日『大好き』って言い過ぎてたせいで、『佐奈が好きだよ』って言っても、いつも笑顔で流された。
僕的には結構きつい毎日だったけど、佐奈が楽しそうにしてくれるのは、僕も嬉しかったよ。
だから、僕は頷いた。
それから、

「そうだね」

って、短く答えたら、佐奈が僕の腕に掴まったまま、また首を振った。

「楽しかった…本当に、楽しかったの。だからそれだけで、良かったのに……。私…私……」

そこで佐奈の言葉が、切れた。
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