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擬人カレシ~白兎・三人目の生徒編◆裏◆~

第5章 好きだから-転化~もう遅いかもしれないけど-


だって、理由が分からない。
体がいきなり成体になっても、精神まですぐに大人になれるわけじゃないってことも、そういえば研究所で聞かされた。
急に成体になったって、それは体だけで、心までいきなり大人になるわけじゃない。
っていっても、心だけがいつまでも子供ってわけでもなくて、体の成体化よりちょっと遅れながら、ちゃんとバランスを取るように精神面も成体化していくらしい。

だから…それが何日後か、何ヵ月後かはよく分からないけど、もう少し経てば、今の僕より違う考え方ができるようになるのかもしれない…けど。
でも…分からないのは今なんだ。
佐奈の行動の理由が分からない。
知りたいのは、今なのに。

「…ん、で……っ」

堪らなくなって、僕は佐奈を強引に抱きしめた。

「何で、僕のことなんか呼んだんだよ!?」

ぎゅう、って、目一杯佐奈を抱きしめて。
それでまた、昨日までの違いに、僕は気づいた。
佐奈の体が、腕の中にすっぽり収まってるなんて、昨日まではなかった。
自分の体が大きくなったのは分かってたけど、佐奈って、こんなに小さかったんだ……。
小さくて、乱暴にしたら、壊しちゃいそうで。

昨夜までの違い…どころじゃない。
違い過ぎて、僕は腕の力を緩めた。
こんな風に思い切り抱きしめたら、今更だけど、本当に佐奈を壊しちゃうような気がして。
そうしたら…信じられないことが起った。
だって。

「……ぇ?」

僕の背中に、佐奈の手が触れたんだ。
佐奈は…僕の腕の中にいる。
その手が僕の背中に…ってことは……。

「……佐奈?」

佐奈が、僕を抱き返して…る?
そんなことって……。
上手く頭が回らない。
身体もそのまま固まってる僕の背中を、佐奈がグーでべし、って叩いて。
それから、何度も何度も叩きながら、僕に縋りついた。
僕はもっとびっくりした。

こんなこと…ありえない。
ありえないのに……。
佐奈が自分から僕に抱きついてくるなんて。
だけど、佐奈は僕の胸に顔を埋めて…それから、そこで泣いてるって気が付いた。
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