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擬人カレシ~白兎・三人目の生徒編◆裏◆~

第5章 好きだから-転化~もう遅いかもしれないけど-


だって佐奈は『瑠衣!』って何度も叫んでた。
『瑠衣、助けて』って。
あんなに毎日、何度も何度も強引に佐奈を抱いてる僕を呼んだ。

何で……?
どうして?
僕なんて、嫌でしょうがないんじゃ、ないの……?

そんな相手に助けを求めてでも、目の前の知らない男から逃げたかった、とか?
分からない……。
分からないけど。
怯えてる佐奈の誤解を、ちゃんと解かなきゃいけない。
それがきっと、今一番にしなきゃいけないことだ。

「佐奈、お願いだから落ち着いて。僕が瑠衣なんだ」
「…………」
「信じられないかもしれないけど、僕が瑠衣なんだよ。目が覚めたら、こうなってた。やっと、僕も成体になったんだ」
「…る、い……?」
「うん。僕だよ、佐奈」

目にいっぱいの涙を溜めてた佐奈が、やっと安心したように息を吐く。
どうやら僕の言葉を信じてくれたらしい。
そういえば、成体直前の僕が近い内に…しかもある日突然、成体に変化するかもしれないって話は、僕自身もだけど、先生である佐奈も研究所で聞いて知ってることだ。
だから最初は驚いても、言われてみれば…ってことなのかもしれない。

でも…何か、僕はもやもやする。
目の前にいた僕が『瑠衣』だって分からなくて怖がったのは、しょうがないし、当たり前の反応だって理解できる。
けど、その時、佐奈は『瑠衣』に助けてって言ったんだ。
自分を頼られたら、ここって普通は喜ぶとこだろうし、実際僕も嬉しくないわけじゃないけど……。

けどさ、変だろ?
昨日までさんざん自分を襲った奴を頼ろうとするなんて。
普通、ああいう場面で無意識に頼る相手っていったら、家族とか友達とか…好きな相手…とか……。

「…………」

ぐるぐる考えて浮かんだことに、僕は一瞬、息をするのを忘れた。
佐奈を捕まえてた手から、いつの間にか力が抜けていく。
だってこんな都合の良い話…あるわけない。
だけど…だけど……。
佐奈が僕の名前なんか呼んだりするから……。

「な…ん、だよ…それ……」

ここまで来て、僕をからかってるの?
なんて…今の佐奈にそんな余裕が無いことくらい、分かってるのに。
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