第5章 好きだから-転化~もう遅いかもしれないけど-
「……ゃっ!?…」
細い…佐奈の悲鳴に近い声が聞こえるまで、佐奈が目を覚まして僕を見ていたことに、気づかなかったんだ。
だから。
「佐奈……」
佐奈の名前を呼んだ、けど、僕自身まだ違和感ありまくりの声に、佐奈は一瞬で顔色を変えた。
震えて…怯えてる。
本気で……。
「だれ、か……っ」
佐奈が本気で怖がって逃げ出そうとするのに気が付いて、僕は咄嗟にベッドの上に佐奈を押さえつけた。
「佐奈……っ」
何で急に?
今日までずっと、どんなに僕にされたって、こんな風にならなかったのに。
それなのに。
「何で……っ」
成体になった自分を忘れて、僕は佐奈をベッドに縫い付ける。
本気の拒絶。
それが耐えられなくて、強引にキスしようとすれば、佐奈が泣きながら顔を背けた。
「いやっ、やだ!」
「佐奈!」
「やだ!たすけて、るい、瑠衣!」
「…え……?」
何で…そこで僕の名前?
瑠衣は僕だ。
目の前にいるのに。
それなのに佐奈は僕を嫌がって、『瑠衣』を呼んでる。
瑠衣に助けて、って……。
何でそんな……。
分からなくて、ぐ、と佐奈を押さえる手に思わず力が篭もる。
「なんだよ、それ…っ」
「いや、あんたなんて知らない!触んないで!瑠衣!瑠衣っ!」
「なに、わけわかんないこと……」
そこまで言いかけて、僕はやっと気が付いた。
僕だって、成体の自分についさっきまで驚いてた。
佐奈が起きたのに気づかなかったくらい、驚いてたんだ。
本人の僕がそうだったんだから……。
佐奈がどんなにびっくりするかなんて、考える必要もないっていうより、今の佐奈には僕が『瑠衣』には見えてないんだ。
目が覚めたら、目の前にいたのは全裸の、会ったこともない大人の男。
そりゃびっくりするよ。
怖くて逃げたくなって当たり前だ。
だからあんなに顔色変えて逃げようとしたんだ。
そっか、そうだよね。
ごめん。ごめんね、佐奈。
怖がらせて、ごめん。
「佐奈、僕は……」
ちゃんと説明しようとした僕だったけど、途中でおかしな事に気づいた。