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擬人カレシ~白兎・三人目の生徒編◆裏◆~

第1章 好きだから-罠-


「佐奈ちゃん」

最初はただじゃれるように見せかけて、ちゅっ、と佐奈ちゃんの頬にキスする。
それから、おでこ…時には、もちろん『まだ』跡はつけないけど、くすぐるように首筋に擦り寄りながらこっそりキスしてみたり、すりすりってしたりもして。
まあ、でもこれはさすがに。

「ちょっ!?こら、瑠衣!」

駄目でしょ、と最初は拒否られた。
でも…慣れというか、めげずに続ける力は偉大だよね?佐奈ちゃん?

「佐奈ちゃん、良い匂い」

元動物だから分かるんだよ、なんて甘えた声を出してみれば。

「もう、瑠衣は……」

しょうがないなあ、なんて、結局許してくれる。
最初の拒否なんて、もう何処へやら…な、甘い甘い佐奈ちゃん。
それってきっと僕がまだ、煉や厳みたいに完全な成体じゃないから…っていうのもあるって、実は何となく分かってるけど。
でも『成体じゃない=子供』ってわけじゃ、ないのにね?
成人してなくたってもうほとんど大人…なんて、人間だってあるでしょ?
なのに佐奈ちゃんは何も疑わないし、警戒しない。
それって、まあ多分。

「この姿のせいもあるんだろうけどさ」

まだ成体前の僕。
ちょっと前までは成体…つまり大人の獣しか擬人化できなかったって研究所で聞いた。
でも今は研究が進んで、成体ちょっと前くらいの獣(つまり僕)も擬人化できるようになったんだ。
で、そんな僕はまだ成体前っていうせいもあるんだけど、他の成体直前の仲間と比べても、僕はちょっと身体が小さい。
それが今の僕の、一番のコンプレックスだ。
何故って。

「姿がどうかした?」

いつも佐奈ちゃんべったりなはずの僕が一人で離れているのが気になったのか、どうかした?って佐奈ちゃんが話しかけてくる。
気にしてくれる。
心配してくれる。
その目で僕を見てくれる。
それが嬉しくて。
でも…僕が秘めているのは、無邪気に彼女を慕うようなそれじゃない。
何も知らない佐奈ちゃん……。
いつか教えてあげるから。
ああ、だけど、今はまだ無理だ。
だって…ね。

「ううん、何でもないよ。佐奈ちゃん。それより僕、今日のお昼はパンケーキが食べたいなあ。僕もお手伝いするから。ね?」

自然に浮かぶ佐奈ちゃん専用の笑顔で、僕は隣に立った。
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