第1章 好きだから-罠-
まあ、末っ子…ってやつ?かは知らないけど、佐奈ちゃんの僕に対する扱いは正にそれ。
だから僕は目下、末っ子の特権(?)をフル活用中だ。
何かにつけて、二言目には
「佐奈ちゃん、大好き!」
そう言って抱きついたり、擦り寄ったりしても、佐奈ちゃんは嫌がらないどころか、嬉しそうに抱きしめ返してくれる。
柔らかくて、良い匂い。
バイトや勉強で、人間や擬人化問わずにいろんなメスを見てるけど、こんなにうっとりできる相手は佐奈ちゃんだけだ。
先生だからじゃなくて、オスとしての僕が、そう感じてる。
そんな僕の思惑を、何処まで他の二人が知ってるかなんて、どうでも良い。
佐奈ちゃんに甘える僕を冷たい目で見ようが、時には嫌味とか刺々しい台詞とかが飛んできたって、へっちゃらだ。
そんなもの、逆に利用して、
「佐奈ちゃん……」
ふるふる、と、僕が震えて見せれば。
「煉も厳もやめなさい!瑠衣が怖がってるでしょ!」
怒られるのは二人の方なんだから。
ふふん、とうっかり鼻先で笑ったのを煉に気づかれた…けど。
「なあに? 煉」
「いつまでもそんなことが通じると思ってるんですか?」
丁寧な言い方で鋭く見下ろしてきたって、僕には何てことない。
「何のこと?僕、まだ子供だから分からないよ」
ふふ、と煙に巻くのは朝飯前だ。
まあ、煉も厳も信用なんてしてないみたいだけど…それもどうでも良い。
肝心なのは。
「佐奈ちゃん、大好き!」
「佐奈ちゃん、もっと傍にいて?」
「佐奈ちゃん、もっと近くに行っても良い?」
傍に擦り寄って、抱きついて。
そんなことを繰り返して、それが当たり前に許容されたら。
今度はもっと……。