第4章 好きだから-貪食-
「………」
ぱち、と僕は目を開けた。
眠れないと思いながら、いつの間にか寝てたらしい。
佐奈は…と、何だかすっかり習慣になったみたいに隣を見ると、そこでは佐奈がすやすや眠ってて、僕はいつもほっとする。
消えてたら。
いなくなってたら。
今までのことが全部、幻だったら……。
そんなことを考えてしまう。
自分でも馬鹿だと思うけど、佐奈がいなくなるって考えるだけで耐えられそうに無い自分が、簡単に想像できる。
でも、今朝も佐奈はそこにいた。
嬉しくて、それだけで自分が心底ほっとしてるのが分かる。
僕はいつもそうしてるように、起き上がりながらベッドの縁に座った。
そうしたら。
ぎしっ。
あれ?今、いつもよりベッドが軋んだ?
今まではこんなじゃなかったと思うけど……。
もしかして、ずっとここで佐奈を抱いてるから、激しくしすぎてベッドが傷んできたとか?
どっちにしても、あんまり音がするなら取り替えたほうが良いかもしれない。
だって佐奈を抱いてるのに、ぎしぎしうるさいのは嫌だ。
まあ実際は、佐奈を抱くと、他の音なんて何も聞こえなくなっちゃうから、どうでも良いことかもしれないけど。
床に脱ぎ散らかした服を拾って、いつものように着替え…って、あ、あれ?
「え……?」
何だこれ?小さい?
けどこれって、ちゃんと僕の服だ。
当たり前だけど、佐奈のじゃない。
昨日着てた記憶だってある。
それなのに、どうして今朝は着れないんだ?
わけが分からない。
どうなってるんだ?これってもしかして夢?
そう思った僕の目に、着れない服を掴んだままの僕の手が見えて。
僕は思わず固まった。
だってこれ、僕の手じゃない。
僕の身体からつながってるけど、でも、昨日までこんなじゃなかった。
「なに?なんだよ、これ…?」
思わず飛び出した声に、僕はまた驚いて口を押さえる。
だって…こんな声じゃない。
僕の声は、もっと高かった。
背も低くて体格も華奢で、声も高くて。
成体直前なのに、他の同年齢の擬人化よりも僕は小さかったから、みんな僕を子供扱いした。
煉も厳も…それから、佐奈も。
もうじき成体になれるって分かってても悔しかった。
早く成体になりたいってずっと思ってた。