第8章 I knew it only after I lost.
『チョコレートは一つまでよ。
残りは没収します』
看護婦さんがそう言って
チョコレートを取り上げる。
『『え~? そんな~』』
思わず俺と杏樹の声が揃って
笑いが起こった。
自分が死ぬ病気なんて全く疑っても
いなくて
杏樹も、俺だって無邪気に笑って
いたんだ。
『 ーねえ。 にいに。
早くこのチョコ レートケーキ
食べたいなぁ… 。
僕、にいにの作るケーキは世界一
美味しいと思 うんだ。』
杏樹が、こんなケーキが食べてみたい
と病院で描いていたイラスト。
それを開いて見ながら、また俺たちは
笑いあった。