第1章 恋は黄昏と共に
「でもありがと。ちょっと元気出たよ」
「マジか。大したこと言ってねーけど」
「昔描けてた色が描けなくなってても、今しか描けない色があるのかなって。おそ松くんのおかげで気づけちゃった」
なんかよく分かんないけど、俺の発言が役に立ったらしい。
キラキラした瞳を俺に向けている。
ここは…川の流れのように流れに身を任せ……流されるままに流れ流れて……
「じゃあお礼にデートしてー!!」
「あ、もう帰らないと」
はいやっぱ無理でした。
肩透かしをくらいがくりとこうべを垂れる。
じろりと視線を向ければ申し訳なさそうな笑顔を返される。
「つれないねぇ〇〇ちゃん」
「ゴメンね、帰って夕飯の支度してあげないと」
何気ないその一言がチクリと胸に刺さる。
そーゆーこと一切聞かなかったけど、それってつまり…男がいるってことだよな。
(やっぱ彼氏持ちかぁー。俺のときめきどこへぶつけりゃいいのよ…)
まぁ、世の中そんなうまい話ないよなと、自分に言い聞かせる。
「ウサギの」
「ウサギかよっ!?」
ベンチから落ちかけ慌てて座り直す。
さっきから一人で勝手に振り回されて、俺バカみたいだ。
「でもね、毎週こうして会えるのが待ち遠しいんだ。これだって立派なデートでしょ?」
「へへっ、嬉しいこと言ってくれちゃって」
「…来週も来るから、絶対会いに来てくれる?」
「んなの当たり前じゃーん」
鼻の下を擦って笑いかけると、〇〇ちゃんもふざけて俺の真似して鼻の下を擦って笑った。
「ありがとう!でも、いつも来てくれるけど用事とか無いの?」
「あー、そーゆーの気にしなくて平気だから」
「へ…いき?」
ポカンと口を開けてはいるものの、
「…そっか」
一言だけ呟き、それ以上詮索してこなかった。