第1章 恋は黄昏と共に
しばらく三人で〇〇ちゃんにちょっかい出しまくってたけど、カラ松がついに空気を読んだ。
「ブラザー?あんまり邪魔しても悪いからそろそろ行くぞ」
「あいっ!〇〇ちゃん、さようならー!」
「うん、またねー!」
カラ松は無駄にカッコつけた笑みを、十四松は無駄に元気一杯な笑顔を〇〇ちゃんに向けてから、くるりと背中を向けてパチンコへ向かった。
「……あれ?おそ松くんはみんなと行かないの?」
背中を見送りながら〇〇ちゃんの横に並び、橋の手すりに肘をつく。
「ん?俺はねー、予定変更して〇〇ちゃんにかまってもらうー」
ニカッと笑顔を向けると、「変なの」と言いながら、鉛筆を持った手を口元へ持って行きクスクス笑いだした。
つかあいつら、俺を自然に置いていくあたりどうなんだ?
どんだけ察しがいいんだよ。
思いがけずちょっと見直しちゃったよ。
「なぁなぁ、その絵、いつになったら色塗んのー?」
何気ない質問。
鉛筆でデッサンしてるのは見てるけど、色を塗ってるのは未だに見たことがない。
俺の質問に対し、〇〇ちゃんはしゅんと肩を落とした。
「それがね…悩んでるの」
「う…ん?」
「どれを主役にするか」
「主役?川じゃねーの?」
俺がそう言うと、〇〇ちゃんは俺の手を引いてベンチに座った。
リュックを肩から下ろし、プラスチックの白いパレットと細い絵筆、水の入った瓶を取り出す。
「うーわー、パレットなんて卒業してから一度も見てなかったわ」
「使わなくなるもんね」
開かれたパレットにはグラデーション順に絵の具が出されてて、〇〇ちゃんは水に濡らした絵筆で、青とか白とか緑を混ぜて色を作り始めた。
画用紙をめくり、まっさらなページに深淵を思わせる青をぽとりと落とす。