第1章 恋は黄昏と共に
——そんなこんなで、いつの間にか季節はぐるり、一回り。
夢見る少年おそ松くんは、一縷の希望を持って、全部の季節橋の上へ通ったんだ。
どこぞの忠犬みたいだろ。
けど、〇〇が現れることは無かった。
今頃何してんだろ?
元気にやってっかな?
俺を置いて世界一周の旅?はたまた宇宙旅行?
それとも…もう他の誰かと…。
それはきっと、ずっと分からない。
でもその方がいいんだ。
その方が夢見れるじゃん?
またいつか逢えるかもってさ。
橙で街が照らされる時間。
いつものように六人で歩く。
「面舵いっぱーい!!早く行きマッスルマッスルー!!」
「おーし今日こそ一攫千金だ!お前ら、今までの人生の負債をチャラにするぞー!!」
『おーーーっ!!』
五人の拳が天に掲げられ、一人ぼやくはライジング。
「全く…就活もせずパチンコに明け暮れて」
「ふふっ、また優等生気取ってるの?そーゆーチョロ松兄さんだって便乗してるくせにっ」
「今日のオレはいつにも増して女神が微笑んでいる気がする!カモンッヴィーナーースッ!!」
「ケッ、やかましいクソがっ」
いつもの道、いつもの会話。
すると突然、会話を遮るシャッター音がした。
「見て見てー!桜だよっ!」
出たよ女子。
何でもかんでもすぐ写真。
ま、確かに綺麗だからいーけどさ。
「桜開花せんげーーんっ!!」
花びらを空中でキャッチしてキャッキャ騒ぐ十四松。
その隣で、カラ松は顎に手を当て自分に酔っている。
「桜…か。儚くも美しい春の風物詩…」
「…死にたいの?」
「なぜ!?」
カラ松と一松のじゃれあいをあったかーい目で見守ってたら、チョロ松が何かを思い出したように「あっ」と声を漏らした。