第1章 恋は黄昏と共に
並んでベンチに座った俺らは、いつものようにテレビの話題とか天気の話とか、くだらない会話で盛り上がった。
〇〇ちゃんは相槌を打ちながら筆を滑らせる。
会話の五回に一回は返事がなくなるので、絵に集中してるのかと思いきや、突然話題を変えてきたり、人のこと言えねーけどとてつもなく自由人だ。
BGM代わりに口笛を吹いていると、一度だけこっちを向きまたすぐお絵かきモードに戻っていった。
それから一時間後…。
「出来ました!」
「お、早いじゃん」
スケッチブックから破かれた一枚を受け取る。
それは、桜の花が咲き乱れる枝を描いた作品だった。
「なんか、線があるとこと色だけのとこがあるのは何で?手抜き?」
「手抜きって……。ぼかすところとクッキリ描くところがあると立体的に見えない?写真でいうとピントが合ってるのとずれてるのの違い」
「へーぇ、頭良くないと絵って描けねーんだな」
大袈裟と言いながら、いつものように手を口に添えて笑ってる。
さして面白いこと言ってるつもりないんだけどねェ。
もう一度桜の絵を眺めると、あることに気がついた。
「この桜、色濃くね?ピンクっつーより赤」
「うん、夕日を浴びる桜にしたの」
なるほど、桜を夕焼け色にしたのか。
表現っつーのは何でもアリなんだな。