第1章 恋は黄昏と共に
「そうそう、おそ松くん」
しばらく話し込んでいたら、〇〇ちゃんは思い出したように画用紙の間に挟まれた一枚の絵を抜き出した。
「今朝ね、やっと完成したよ」
画用紙をそっと手渡される。絵の具は既に乾いていた。一体何時からここに来て描いてたんだろ?
「おおっ、なんかすげー」
肉眼で見ていた夕日よりも、もっとずっと鮮やかな世界が、小さな紙切れ一枚に広がっている。
空の青と雲の影、遥か遠く、山の向こうに沈みゆく夕日、燃えるような赤を反射する川のせせらぎ。
一方、手前の草むらは影を落とし、情熱的な茜色とは対照的な静けさを醸し出している。
いや、静けさっつーより寂しそうな感じ?
まるで、日が沈むのを物悲しく見ているような…。
って…触発されてる!?どうした俺の表現力…!ついに脳味噌文明開化!?
「まんま〇〇ちゃんだな」
「そうかな?どこらへんが?」
「一人が好きと見せかけて、寂しがり屋な感じが絵に出てる」
(あとは、静かそうに見えて明るくて情熱的なとことか)
生意気言ったのに、〇〇ちゃんは「なるほど」と妙に納得しながら頷いた。
「おそ松くんって呑気に見えて鋭いかも」
「あらー、ついに惚れた?」
「それでね、夕日が完成したから、今は桜に挑戦中」
「サラリと流されたよコレ。ま、ゆっくり描いたらー?」
橋のすぐ側にあるいつものベンチに腰を下ろすと、〇〇ちゃんもちょこちょこ子犬みたいにくっついてきて隣に座る。
出会った頃は、落ち着いた雰囲気のおねーさんだったのに、今ではすっかり甘えんぼな一面を見せてくるようになった。