第1章 恋は黄昏と共に
自分としては、早く向かって待ってる予定だったのに、〇〇ちゃんは既にそこにいた。
俺に気づかず、ポツポツと水面に浮かぶ桜を眺めている。
さりげなく隣に寄り添うと、少し眠たげな表情を俺に向けながら、人差し指で鼻を撫でてきた。
「おそ松くん、花びら付いてる」
「懐かれた。いーだろー」
「うん、羨ましい」
指の腹で花びらをツンツンしながら、〇〇ちゃんはくしゃりと笑った。
「くすぐったっ」
「あははっ!ごめんごめん!」
実を言うと、笑ってくれると思ったからつけっぱなしにした。
俺だってたまにはあざといの。
「へえ?いつもの赤いパーカーじゃないんだね?」
「かっこいー?」
「はいはい、かっこいいよ」
鼻の上から指が離れると、花びらがひらひらと足元に落ちた。