第1章 キミと出会う
『薬研、ごめんね?付き合ってもらって……』
「気にすんな。元はと言えば、俺のせいだしな」
『薬研のせいじゃないよ!気にしないで?』
「…名前は優しいな。こんな何者かも分からない俺を受け入れてくれて」
そう言いながら空を見上げる薬研
その目は、どこか悲しそうだった
『薬研は悪い子じゃないと思うから…だから部屋に連れてきたんだもの』
「へぇ、でもわからないぜ?俺だって男なんだから、名前の事を食っちまうかもしれないだろ?」
薬研はこちらを見ながら悪戯に笑った
その笑みでさえ、私は胸がドキッとしてしまった
『な、何言ってるの…!見た目と言葉が合ってないよ!』
私は照れ隠しに目を逸らしながら歩みを進める
すると、薬研はそっと私の手を握ってきた
「名前は可愛いな、大人なのに純粋ってゆうか」
『そ、そんなことないし!バカにしないでよね……!』
薬研の手の温もりに、何だかホッとしてしまう自分がいる
ずっと一人で、彼氏も居なかったから尚更新鮮だ
そんな薬研の手を私もぎゅっと握り返した
「……!」
『あ、コンビニ見えてきた…!寒いから、早く買って帰ろ?』
「……あ、あぁ…そうだな…」
手を握り返された薬研は嬉しそうに、少し恥ずかしそうに笑った