第8章 君の幸せを願って
「……俺は…アンタと一緒にいる時間は少ねぇけど、アンタのことが好きで堪らなかった…、俺の片思いでも、アンタの傍に居れることが…幸せだった。少しの間だったけど、アンタに出会えてよかったよ。じゃあ、元気でな…名前」
その言葉を残せば、ポケットから合鍵を取り出しテーブルに置けば薬研は出ていってしまった
『やげっ…まって……!』
薬研の言葉に応えようと、力なく発した言葉は誰にも届かずに空気に消えた
『っ……薬研、なんで……、そんな言葉を置いていっちゃうの……私、何も伝えられてないよ……っ』
薬研の最後に残した言葉が、頭の中を何度もループする
その言葉に胸が苦しくてたまらなかった
私は起き上がり、自分の手首を見れば薬研に押さえつけられたせいで赤くなっていた
まだ薬研の手の感覚の残る手首を撫で、息が出来ないくらい泣いた
でも、これでいいんだよね…そう自分に言い聞かせて