第3章 貴族の朝食
終わったか…
あー、クラクラする。
私はその場に力なく座り込んだ。
ナーシャ 「ごちそうさま♡」
にっこりと微笑むナーシャ。
でもどこかその笑顔は嘲笑うようだった。
ナーシャ 「あ、もう朝ごはんいいよ。片付けちゃって。」
ななし 『は、はい…。』
私はさっさと片付けて部屋を出ようと扉を開けた。
ナーシャ 「油断…しちゃダメだよ。ななしちゃん。」
いつの間にかナーシャは私の背後にいた。
驚きのあまり廊下に飛び出てしまい、そのまま扉が閉まってしまった。
恐怖で腰が抜ける。
心臓がすごい勢いで鳴っている。
もうやだ。こわい。
ななし 『もう、やだよ…。』
??? 「おい、どうした?」
聞き覚えのある声に顔を上げた。
ななし 『アベル……アベ、うっ…ぐすっ』
アベル 「は、え!?ほんとどうしたんだ!?」
ななし 『こわい…こわいの。私…殺されるのかな…うっ。』
アベル 「はぁ!?誰がそんなこと…。あーもう落ち着きなよ…。」
アベルはしゃがみこんでいる私を優しく抱きしめてくれた。
何も分からずにこんな世界に連れてこられ、不安でいっぱいだった私は、久しぶりの安心感に涙が止まらなかった。
泣き止んだ私を確認するとアベルはさっと立ち上がった。
ななし 『アベル…ごめん』
アベル 「別に。それより、お前、誰かに噛まれたのか?首から血の匂いがする。」
ななし 『あ…うん。』
アベル 「誰だ?」
ななし 『アッシュさん…』
アベル 「あー、アッシュ兄様か…」
ななし 『…と、ナーシャ』
アッシュ 「ナーシャ!?」
ななし 『はい…。』