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【おそ松さん】雨音が聴こえれば晴れ

第4章 怪雨



長い髪のせいでよくは見えなかったけれど、微かに上がる口角が笑っている事を教える。女の子と話すなんて慣れてないせいか、笑ってくれてることが嬉しくてついポーッとしてしまった。助けてよかったなんて不謹慎かもしれないけど、考えちゃったり。親切もたまにはしておくものかもしんない。ここでいつもなら軽く声をかけてみたりするんだけど、どうにもそういう軽い事をしたくない。

本当の親切心が勝ったわけだ。

「これでよしっと、気をつけて」

そっと小さい手をとって、白い棒を渡してあげる。雨と同じくらいひんやりとした手が気持ちいい。ふと思ったけど俺大胆なことしてるな。でもこれも単なる人助け、別にやましい事なんかない。

言い聞かせてるけど、しっかりズボンの下は反応しちゃったりなんかして。まぁ俺童貞だし、そういう経験はないわけで女の子の手に触ったのとかこれが初めてだし、考えるのやめよう悲しくなったきたわ。
いいや、もう帰って寝よう。そして夢の中の彼女とイチャつこう。

そんな事を考えながらその場を去ろうとしたら、待ってと呼び止められた。振り向けばお礼をさせてくださいなんて言っちゃって、ダメだよ男にそんな魅惑的な台詞簡単に言うとか、食べられちゃってもしんないよ。正直飢えてるけど、この子なかなか綺麗だけど、でもただの優しさくらい残しておきたい。

「お礼?いーよ、俺が勝手にやったし」

あぁぁ、勿体ないことしたなぁなんて足を踏み出せばバシャバシャと後ろから音がする。目の見えないその子が俺の方へゆっくり歩もうとするものだから、慌ててその子に駆け寄った。このまま事故られでもしたら、おそ松くん助けた意味がないじゃんか。

「見えてないんでしょ?いいって言ってるのに、危ないよ」

思った事を口にした瞬間、後悔した。
ダメだ、言い方がマズイって...。
心配してるからってきつい事を言ってしまったかもしんない。上手く言えないけど、不自由な事を不自由だと本人にいうことは、相手に失礼なんじゃないかと思った。でも口に出した言葉は戻らない。しとしと降る雨が身体を冷やした。
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