第8章 夏の思い出は一生輝く【木兎光太郎】
「何か分かった...?」
「一応、でも、今回はどっちもどっちって感じなので、僕がどうこう言える事じゃないです。でも、夢香さんは自分にもっと自信を持ってください。」
「うん...」
ちょっとよく分からなかったが、光太郎が私に怒っているのは確実のようだ
原因が分からないまま、私は赤葦くんと別れて体育館に戻った
その後も、練習に身が入らなかったが、何とか並みのプレイをすることが出来た
でも、どうしても、光太郎の得意なクロスが今日は入らなかった
午後7時
丸一日の部活が終わり、体のだるさも眠さもマックスだ
いつもなら、光太郎を待って一緒に帰るのだが、今日はどうもそれが出来なかった
なので、木葉に"今日は先帰るって光太郎に言っといて"とお願いしておいた
その時、木葉に"分かったが、今日木兎と何かあったろーお前!"と言われた
わたしは、"うーん分かんない"とだけ返して戻った
一人で帰る帰り道は寂しくて虚しくて
光太郎が居てくれる有り難みがよく分かった
でも、今日はどうも一緒に帰れなかった
一人になると思い出すのは、2年の春高予選準決勝。
もう、何度も何度も悔やんでいるのに、悔やみきれてないのだろう
そして、今日の光太郎の怒ったような声
心が痛い
そう思うと、無意識のうちに鼻の奥がツンとする
ダメだ。泣きそう
好きな人に嫌われるってこんなに嫌なんだ
悲しいんだ、痛いんだ、虚しいんだ
今まで、好かれようと努力していたのが馬鹿みたい
「夢香っ!」
「...!」
真っ暗な心の中に息の上がった光太郎の声が響いた