第8章 夏の思い出は一生輝く【木兎光太郎】
練習に戻るが、あの事が気になって集中できなかった
スパイクが入らない
サーブが届かない
ブロックのタイミングが合わない
ついにはストレートとクロスがよくわからなくなってきた
そして、ゆなにまで注意されてしまった
「夢香どうしたの?何かあったんでしょ」
疑問形じゃないのが流石だと思う
「う..ん...」
何も考えられなかった
ただ、原因を特定するためにあの光太郎の怒りっぽい声を態度を思い出すたびに私の心臓を貫く様な辛さになっていく
練習にならない....
そう思いながら私は隅っこで体育座りをして顔を伏せていた
「何かあったんだね...」
ゆながそこまで言って、体育館の入口を見る
すると、ゆなは驚いた様に目を見開いてから"夢香"と私を呼んだ
「夢香にお客さんが来てるよ?」
そう言われて、仕方なく体育館の入口を見た
そこには、赤葦くんの姿があった
私は急いで立ち上がり、走って赤葦くんの所へと向かった
「どうしたの?」
要件を聞こうと問いかけたら、"こっち来てください。"と言って私を外へと促した
「で...何...?」
外の、誰も居ない静かで男女それぞれの体育館からいい感じに離れた場所につれ出された私
まぁ、どうせ今日は練習に集中出来ないから良いけど...
「あの、夢香さん、木兎さんに何か気にさわる様なこと言いましたか?」
「...え?」
「いや、夢香さんに任せた後、戻ってきたら練習出来るようにはなったんですけど、どうも、イライラしてるっぽくて...」
「......」
「何かあったんですね」
...私ってそんなに分かりやすいのだろうか。
「途中まではご機嫌で良かったんだけど、いきなり怒ったような声になって....」
「機嫌の良い時と悪い時の間に何て言ったんですか?」
「えっと..確か...."私は才能無いけどさ、光太郎は有るんだから"なんちゃら...って言った気がする」
そう言うと、赤葦くんは腕を組んで考えたあと、何かに気づいたのか、"あぁ、なるほど"と頷いた