第7章 恋に落ちる速度とその証明【及川徹】
「....取り合えず、コレあげるから部活行け」
「ええ~」
ちょっとおかしい取引ではあるが、私に取っては利点しかないので黙っおこう
「ま、いいや取り合えず貰っとくよ。でも、今度は手作りクッキーとかがいいな~♪」
こいつ、注文だけは多いのな
「私がクッキーとか作ると思う?」
「....」
おい、そこはお世辞でも作ると言えよクソ川
「てか、何で私なんかに言うのさ。及川モテるんだから、他の女子にでも作って貰えばいいデショ?」
ずっと気になってたことを聞いてみた
何で私なんかにしゃべりかけたのか
「その、私"なんか"っての嫌だな。もっと山田さんは自分に自信持っていいと思うけど」
「そんなの及川に言われたくない」
いつもキラキラしてて、自信の塊みたいな及川に私なんかの気持ちとか分からない
別世界の人間だ。
「そっか.......。でも、山田さんに話しかけた理由は変わらないから」
「...なんで」
なんで私"なんか"と聞こうとしたとき、及川が言葉を重ねる様に言った
「山田さんのことが、夢香のことが好きだから」
「!」
学校一のイケメンに告られるなんてどこかの漫画みたいだ
でも....
そして気づいた
あの質問を受けた時から、私は頭の何処かで及川のことを考えていたということに
「一人教室で放課後、勉強頑張ってるの知って、ずっと見てた。いつか話したいと思ってた。」
「...ッ////」
お願いだ、その先の言葉を言わないで..
「夢香ずっと好きだった。僕と、付き合って下さい」
嘘偽りが無いとすぐわかるような真っ直ぐとした眼差し
ドストレートで、避けられないボール
「あ、えっと.....」
言葉がまとまらないし、顔も熱くなる
何でか分からないが呂律も回らない
そうやってもたもたしていると及川は..
「....返事はまた今度で良いよ。ごめんね。いきなり...じゃあ部活行くよ」
そう言って教室を出ていこうとする
待って、違う
違う違う違うの...
まって...
ねぇ...
「待って...!」
気づいたら、私は腕を掴みながら大きな声で及川を呼び止めていた