第20章 雲の上の存在【及川徹.2019HPB】
岩泉side
そう聞くと、及川は慌てたように "岩ちゃんの馬鹿!人でなし!" と意味の分からないことを言い出す
昔からこいつは、分かりやすいというか…馬鹿というか…
「で、実際どうなんだよ」
「ッ、ちょっと、本当にちょっーと気になってるだけだからッ!」
顔を赤くしながらそう言われても説得力に欠ける
往生際が悪いな。
でも、こいつが女子を好きになるとか今までなかった気がする。いつも告白された奴と付き合って自然消滅かフラれる。
その繰り返しだと思ってた
「……とりあえず松川と花巻に報告だな」
「はっ、嫌だよッ!!あの二人に知られるとか絶対面倒いッ!」
そう大きな声で否定する及川
……でも……
「えぇ、でもぉ?その話ぃ聞いちゃったしぃ??」
「気になるわよねぇ?花?」
「ねぇ?松?」
そう言ってニヤニヤしながら教室に入ってきた花巻と松川
その二人を見て及川は赤い顔から真っ青になる
「うっわ、嘘でしょ?嘘でしょ?」
赤くなったり青くなったり騒がしい奴
そして花巻と松川が俺たちの周りに座り
松川が口を開く
「……でもさ、なんで山田なの?……その、アレだけど…及川なら色々居るでしょ?」
別に山田が可愛くない訳じゃない。
でももっと上の人は居るし、及川なら選べるだろう
「あのね、俺だって好きな子くらい出来ますぅ!」
及川は頬をぷくぅと膨らましながらそう訴える
でも今までいなかったのは本当だろ
「じゃぁ、なんで好きになったの?」
花巻がそう言いながら、及川の横に山のように置かれてるお菓子(誕プレ)を一つ取り出し封を開け口に入れる
及川は恥ずかしそうに視線を下げて
普段からは想像出来ないような自信なさげな声で話し始めた
「実は、俺もよく分かんないんだよね……気付いたら目で追ってて……その……」
段々と声のボリュームが小さくなっていく
痺れを切らした花巻が "じゃあ、初めてあった時は?" と言う
「初めは……岩ちゃんの教室に遊びに来た時、たまたま見かけただけなんだけど………見る度にコロコロ変わる表情とか、、たまに見せる笑顔とか………、、」
そう言って顔を赤くする及川を見て、末期だと悟った