第20章 雲の上の存在【及川徹.2019HPB】
今日は終業式で、学校も午前中で終わる
放課後は部活動の生徒が部活に精を出している
私は帰宅部なので特に用事もない。
早く家に帰ろうと靴箱で靴を履き替え、カバンからタオルを取り出そうとしたとき、学校に数Ⅲの教科書を忘れてしまったことに気づく
「あ、ヤバい」
確か月曜日、数学の問題が当てられてたし、予習しとかないとヤバい
私は暑い中、ため息をこぼしながら今来た道を引き返した
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岩泉side
「はぁぁ………」
部活前に3-5の教室でご飯を食べている時
俺の隣でさっき後輩に貰ってた牛乳パンをかじりながら、大きなため息を漏らす及川
「んだよ、気分悪ぃな」
「だってさ!聞いてよ、岩ちゃん!!!」
バッ!と顔を上げ、愚痴をこぼす体制に入る
これは面倒なことになった…と頭の中で思いながら "んだよ…" と聞いてやる
「俺が誕プレ貰ってるとこ、山田さんに見られたんだよ!?最悪ッ!!」
そう言って頭を抱える及川
んだよ、気持ちわりぃ…
こいつは何かと俺と同じクラスの女子、山田のことを気にかける。ほかの女子にはグイグイ行くくせに山田には話しかけすらしない
「んだよ、、別にそれくらい良いだろ。なんで心配するんだよ」
「ッ……だってぇ……」
そう聞くと及川は押し黙った
その時、教室のドアが "ガラッ" と音を立てる
「……ぁ、と……、」
そこには山田の姿があった
暑い中急いで来たのか、汗が首筋に垂れている
俺は何となく声をかけた
「おう山田、どうした」
「あ、数学の教科書忘れちゃって…」
そう言いながら自分の席に向かう。
数学の教科書を取り出しカバンにしまい、そして教室を出ていこうとする
「じゃーな、気おつけて帰れよ」
「うん、じゃーね」
そう挨拶をして山田が教室を出ていった
そしてこいつは一言も喋ってない
「おい、及川。なんで喋んないんだよ」
「……岩ちゃんは俺に自慢したいの…?」
"何がだよ" と言おうと及川の方を見ると、耳まで真っ赤にして顔を両手で覆っている。
おいおい、まじかよ。
「…………お前、山田の事好きなのか?」